生みの苦しみを味わった4年間を振り返って

  3月に入り、啓蟄を過ぎました。春の気配が濃厚になり、大学周辺の梅の木も誇ったように美しく優しい花を咲かせています。先日は、暖かな日差しの中で、成虫で越冬したキタテハやキチョウ、テングチョウ、ムラサキシジミなどのチョウが姿を見せてくれました。こうした生きものの息吹を感じると、心が弾むものです。

  さて、この3月は特別な意味のある月間です。というのは、ちょうど4年前の4月、私の現在の大学の保健医療学部が産声をあげ、新しい教育と研究がスタートしたからです。あれから、早いもので、4年が過ぎようとしているのです。振り返ってみると、大学設置審議会への新しい学部設置の申請作業と大学教員の資格審査から始まり、認可がおりるや否や、入試の実施と続きました。そして次に、休む間もなく、入学式、学部授業の開始と続きました。新しい学部はまだ多くの方々に知られていなかったために、入学定員数に満たず、定員割れを起こしていました。そのため、初年度は埼玉県内の高校を何日もかけて訪問し、大学の広報活動に専念しました。私の属す学科は、人々の健康と医療を科学できる人材を育成する目的で作られましたが、やはりその真の目的や目標が理解されなかったため、初年度は定員割れを引き起こし、学科の存在意義をホームページや医療系の雑誌などで宣伝したものです。

 
加えて、学科運営上、学生のための種々の委員会や学科内係、あるいはさまざまな作業部会を立ち上げ、教育と研究活動に支障を来さないように取り組みました。こうした活動を通じて、組織の健全で円滑な運営がいかに苦労を伴うものかを体感することができました。こうして、完成年度を迎えた昨年は、最終学年の国家試験対策や臨地実習に加え、就職支援活動も入り、毎日が息をつく暇もないくらいの忙しさでした。その間、大学院修士課程を設置するための委員会を発足させて、再度、文科省にその設置申請を行いました。こちらも幸いに設置が認可され、修士課程の入試が実施されたのです。

 
今、過ぎ去った4年間を回顧してみると、ただただひたすらに井戸を掘る仕事であったように思います。私は、このできあがった井戸から出る水が、学生にとっておいしい水であるなら、あるいは学生にとって喜びに通じるものであれば、私たち達が苦労して掘ってきた井戸の存在は大きなものであったと思いますし、行動してきたことには、大きな間違いはなかったと考えています。

 
もうすぐ卒業式です。この時期、私は立場上、今年はどんな言葉を卒業生に贈ったらよいかを真剣に考えます。4年前、学生は一粒の種のように私たちの大学に蒔かれました。そして、医療人になりたいという夢を実現させたいために、大学という畑で芽を出しました。この芽は大学の教育環境と教員という肥料の存在によって、すくすくと成長し、最終学年では国家試験を受験するところまでに至りました。当初の夢が実現して大きな花が咲き、最後は結実して、4月からはまた新しい環境の中で社会人の生活をスタートさせてほしいものです。

 
最後に私は、「どんな職業でもいい、どんな身分でもいい、どんな立場でもいい、その場で人々に必要とされるように努力することが人生を成功に導いてくれるものだよ」と卒業生に声をかけたいと思います。人生で大切なことは「できる人より、できた人」なのですから。今日は4年間を振り返ることで、心が謙虚になれる1日でした。

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