元旦の日に祈ること

  新しい年を迎えました。皆さん、明けましておめでとうございます。今年は寅年で、僕の干支でもあります。虎は、動物学的には、食肉目ネコ科ヒョウ属に分類されています。動物占いで寅年をみると、まず、まとめるのがうまいとあります。次に、後輩や部下、兄弟だけでなく、友達や会社の同僚などの面倒をしっかりみるとありました。みんなから頼りにされてしまうタイプのようです。さらに、「絶対ムリ!」と誰もが思うような難しいことも「なせば成る」と考えて、やりとげてしまい、尊敬されるともありました。また、自分だけでしゃばったりしないなど、周りを見渡すバランス感覚がバツグンとあり、わきまえられる人でもあるとのことです。僕は元日に当たり、こんなに素晴らしい動物占いの内容に一歩でも近づけられるように謙虚に誠実に生きていこうと決意しました。

  さて、元日というと、僕は40数年前の中学時代をよく思い出します。当時、実家の裏には家がなく、麦畑と桑畑が一面に広がっていました。僕の親友で、昆虫採集をいつも一緒にやったりブラスバンド部で共にクラリネットを吹いていた前田進君が近所に住んでいて、元日から2人で畑にテントを張り、そこにコタツを持ち込んで、50mもある長いコードで家から電気を引いてコタツで暖をとりながら、一緒に勉強したものです。今ならとても叶わない貴重な冒険的な経験でした。僕たちは変わり者で、厳寒の信州で、元日から畑に張ったテントの中で、語らいながら中学の宿題をやっていたのです。

 

     その前田君はやがて、東京大学でウイルス学を専攻し、カイコを用いたバキュロウイルスベクターの研究で世界的に一躍有名になりました。前田君の発見により、昆虫が人間の有用な物質をつくる工場になったのです。後に、この研究成果で前田君はカリフォルニア大学の教授になり、多くの世界的なウイルス学者を世に輩出しました。そして、ときのノーベル賞候補にもノミネートされました。僕は常々、こんなに素晴らしい科学者を幼友達にもち、心から感謝しています。しかし、悲しいことに、今、彼はこの世にはいません。カリフォルニアと東京との行ったり来たりの生活が彼の健康を害してしまったのです。毎年、元日に思うことは、若くしてこの世を去った彼のために、僕は代わっていったい何をしてあげられるだろうか、なのです。まだまだ科学的に解明されていない謎を解き明かしたかったであろうと思うからです。若くして命を失った方は、人生でやり残したことがいっぱいあったと思うからです。

 

  ところで、昨年は世界的に不況の嵐が吹き、経済はたいへん混乱しました。日本は政権交代が実現し、まだ明日の日本の姿が見えぬままです。仕事や住まいを失った人々が増加したり、不幸な自殺者も急増しました。こんな状況での年明けですが、人間はたとえどん底にあっても、決して忍耐と希望を忘れることなく、明日を夢見て力強く生きていってほしいと願っています。ちょうど今年のNHK大河ドラマは、幕末の風雲児、坂本龍馬の生き様を描いた「龍馬伝」です。真っすぐな志と情熱で混乱した幕末の日本を明治維新を進める社会の姿へと導いたしたたかな生き方は、たいへん今日的であり、学ぶところがたくさんあります。

 

  28歳で脱藩して自由な身になり、江戸に出て幕臣、勝海舟の弟子になった龍馬は、やがて薩摩藩の援助を受け、長崎に後の海援隊となる海運会社を設立しています。「仲間とともに世界の海に羽ばたきたい」という大きな夢を実現させた後、薩摩と長州の間に立ち、薩長同盟を実現させ、また、無血の大政奉還を画策したことは日本の歴史を大きく転換させることになりました。このような日本の明日を確かな眼で見据え、人々のあるべき幸せの姿を追い求めた人生は、真に心に響くものです。「常識にとらわれず柔軟に生きる姿」は、今の時代、必要とされる人の生き様のように思います。

 

  今日は1年の始まりに当たり、心の平穏と心身の健康、そして社会の安定や人々と地球の無事を祈る1日でした。

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