今年は新型インフルエンザが世界的に猛威を振るい、日本でも夏場から流行期に入ったようです。人類の歴史は、病原体による感染症との戦いであったと言っても過言ではありません。しかし、人間は抗生物質を発見し、細菌やカビなどの感染で死ぬ人は激減し、多くの感染症は克服することができました。特に、1980年に「死の病」と恐れられていた天然痘を撲滅することができたのは、有名でしょう。一方で、その後もエボラウイルスやエイズウイルスなど、種々のウイルスを中心に、恐ろしい病原体が現れ、人類に脅威を与えています。
  さて、病原体に抵抗するためには、その病原体の性質を知って、適切な予防策や処置法を講じることはもちろんですが、何よりも人間が本来もっている免疫力を高めておくことが肝要になります。18世紀に、イギリスのジェンナーが種痘ワクチンを開発して、多くの人を天然痘による感染から守り防ぐことができました。予め、病原体のワクチンを接種しておけば、それに対抗する特異抗体やリンパ球が誘導されてくるので、次に本物の病原体が侵入しても、すぐに免疫応答が生じて、外敵を撃退することができるのです。人間には身を守る生体防御力が生まれつき備わっているのです。
   ところで、インフルエンザウイルスは、表面にヘムアグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)というスパイク状の構造をもっています。この構造は宿主の細胞に侵入したり増殖した子株の放出において重要な役目を果たしています。インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、A型の表面構造は特に変異しやすいことが知られています。このため、前年にワクチンを接種して特異抗体ができても、それは、翌年になると、変異により発生した新型の表面構造には反応できないのです。通常、新型インフルエンザは、カモなどの水鳥や家禽類であるニワトリに感染する鳥インフルエンザとヒトインフルエンザがブタに同時に感染すると、ブタ体内で遺伝子が混ざって新型が誕生すると言われています。したがって、ブタがインフルエンザウイルスの育て役になっています。
   今年の新型インフルエンザはH1N1型というタイプのようですが、この流行感染に備えるためには、ポイントが3つくらいあると僕は考えています。一つ目は、第1の侵入阻止バリヤーを築くことです。特に侵入を阻止するために、保湿マスクを着用することです。また手洗いやうがいも予防の基本になります。感染対策において、病原体を持ち込まない、持ち出さないはもっとも重要なのです。しかし、ウイルスのようにきわめて微小な病原体は第1バリヤーを突破して体内に侵入してきます。したがって、二つ目に大切なことは、侵入する入り口となる喉や鼻など呼吸器系の粘膜面を健康に維持することです。この第2バリヤーになる粘膜には、ネバネバしたムコ多糖体である粘液が存在するので、ウイルスの侵入を阻止することができます。つまり、粘膜が乾燥するのは感染を助長させてしまうのです。さらに、このバリヤーを突破して体内に侵入するウイルスも存在するので、それを撃退する免疫細胞の機能を高めていおくことが3つ目の重要なポイントになります。マクロファージやNK細胞、あるいは抗体を作るBリンパ球やウイルス感染細胞を特異的に攻撃するキラーTリンパ球などの免疫細胞を日頃から元気づけておくことが大切なのです。
   今秋から冬にかけて、新型インフルエンザはさらに猛威を振るうと予想されています。このウイルスの感染に備えるために、ワクチン接種はもちろんですが、第1のバリヤーを築くことに加えて、第2のバリヤーを高めるビタミンAを摂取したり、細胞の分泌力を高める副交感神経を作動させることを心がけてほしいと思います。さらに、キノコ類や海草類、あるいは熟成バナナや乳酸菌、ニンニクなどの食材を大いに摂取して、免疫細胞機能を日頃から高めてほしいと願っています。ワクチン接種とともに、こうした身近な生活スタイルが新型病原体への抵抗力を高めるものなのです。
   今日は新型ウイルスを免疫学的に撃退する方法について真剣に考える1日でした。




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